弁護士三浦義隆のブログ

流山おおたかの森に事務所を構える弁護士三浦義隆のブログ。

不倫カップルにありがちなこと

8月は異様に忙しく、ブログの更新を怠っていた。月も変わったことだし、ここからまた更新ペースを上げていこうと思う。

更新しないでいる間にやや古い話題となってしまったが、はてな元CTOである伊藤直也氏の不倫騒動というのがあった。

不貞相手の女性であるA氏が伊藤氏に対しての怨恨からか、自らのブログで不貞関係を詳細に、画像付きで暴露したことに端を発した騒動だ。

相手女性A氏のブログは、現在は非公開になっているようだが、伊藤氏自身による釈明ブログは現在も公開されている。

d.hatena.ne.jp

弁護士であり、日頃から不貞に絡む紛争を多数扱っている私は、このブログを読んで、「あるあるだなあ」「不貞男が相手女性から恨まれる典型的なパターンだなあ」という感想を持った。

以下、伊藤氏ブログの記述を引用しながら、不貞カップルにありがちなパターンを示していきたい。 

 

1. 精神的に不安定な当事者が不貞関係にはまりこみがち

当時 A さんが何度かプライベートのことで落ち込み、死にたいということも含めて私に相談することがあり、それをケアするようになってから関係が深くなっていったように思います。

 A氏は交際前から精神的に不安定な状況だったことが窺われる。これはよくあるパターンだ。

精神的に弱っている状態の人は他者に救いを求めがちなせいか、不貞の恋愛関係にはまりこむケースが目立つ。男の側も必ずしも身体だけが目的というわけではなく、それなりに真剣に相手女性のことを気にかけ、精神的に支えようとするケースが多いようだ。

しかし不貞関係という時点でいろいろと無理があることから、結果としては相手女性の精神状態は悪化しただけに終わることが多い。精神状態の悪化によって、暴露などのやけっぱちな行動に出る当事者も珍しくない。

2. 既婚男性の側は離婚する気などないのに離婚を示唆したりしがち

しかし既婚者であり離婚は考えてはいなかった私は、彼女の人生に責任を取ることができないとわかっていました。それにも関わらず関係を深めてしまったことが、最終的に A さんを大きく傷つける結果を招きました。

これがありがちなパターンなのは、弁護士でなくても知っていると思う。不貞関係が結実して、前の配偶者と離婚し不貞相手と再婚するケースもときどきあるが、例外的だ。既婚男性が独身女性と交際する場合、男は離婚する気など最初からないことが多い。

ただしこの点は、既婚男性が不貞相手の女性に対し、離婚する気はないことを誠実に告知さえしていれば、別に責められるいわれはないであろう。相手女性としても無理矢理恋愛させられたわけではないのだから、結婚できないからといって被害者ぶる道理はない。

もっとも、実際には、既婚男性は不貞関係を継続するため離婚を約束したりほのめかしたりする場合が多い。これをしてしまうと相手女性の怒りと恨みを買い、妻だけでなく相手女性との間でもトラブルとなるリスクが高まる。

なお伊藤氏のブログは、その場しのぎの言動を繰り返してA氏を傷つけたことを率直に認めており、その点は評価できるが、「伊藤氏がA氏に対し妻との離婚を約束したりほのめかしたりしたことがあるのか、それとも全くないのか」という点には触れられていないようだ。

3. 不貞男性は相手女性に妻の悪口を言いがち

婚姻関係にありながら A さんと交際する中、私は A さんにお酒の席や LINE などで、家庭の悩みや愚痴を打ち明ける機会が増えました。その愚痴には誇張も多数含まれています。今回 A さんが書かれたブログには、その打ち明け話を元にした妻の姿も記載されていますが、それらは実際の妻とは異なります。私は、私が原因でうまくいってない家庭の悩みを妻のせいにして、それを A さんに伝えてしまっていました。その話が膨らんで、妻の虚像の元になってしまっています。

これもありがちすぎる話だ。不貞男性は、相手女性に対し、事実もそうでないことも含め、妻の悪口を言いがちである。それが相手女性に対するサービスになる(少なくとも不貞男性はそう思っている)からだ。

ところで、伊藤氏ブログには「私は、私が原因でうまくいってない家庭の悩みを妻のせいにして、それをAさんに伝えてしまっていました。」との記述があるが、「なぜ妻のせいにして伝えたのか」という点には触れられていない。要はA氏の歓心を買うため妻の悪口を吹き込んだということなのであろう。

4. なぜか妊娠しがち

A さんはちょうど私と関係が深まったころに、Aさんの避妊を止めました。私はそれを知りながら、かつ妊娠の可能性もわかっていながら避妊なしでの性交渉に及びました。

これもよくある。結婚の可能性がなく、婚外子として産み育てる覚悟もないなら避妊はするのが当然で、合理的に考えれば避妊しないという選択肢は双方ともないように思える。しかし当事者間の心の中には、避妊しないという選択肢が浮上してしまうことが往々にしてあるらしい。

これは私見だが、不貞の恋愛関係においては、リスクを避けた行動をとることが相手方に対する真剣さを疑わせる要因となるため、敢えて高リスクな行動をとることで相手方に迎合するという心理が働きがちなようだ。しかしリスクを取っておきながら、そのリスクの結果を引き受ける気はないので、妊娠すると中絶することになるのが普通である。*1

5. 不貞男性は関係継続を相手のせいにしがち

何度か避妊をしたいと A さんに伝えたこともあったのですが、日頃 A さんの申し出を否定すると A さんがリストカットに走ったり、ネットに私のことを公にすると迫ることがあり、それが怖かったこともあって結局は避妊せずに性交渉を続けてしまいまいした。

A さんをすぐに警察につれて行かなかったのは、私の中でも本当にそれをしていいのかと、ずっと躊躇があったからです。被害届を私が出すことで、警察は警告を含め動くことができると言われましたが、それをしたときに何が起こるか想像すると怖くて、すぐには決心できませんでした。結果、警察に相談したにもかかわらず軟着陸できないものかと、ずるずると関係を続けました。 

このように、不貞男性が不貞行為を続けた理由として、「相手女性が自傷他害に及ぶかもしれない」というおそれを持ち出すのも典型的なパターン。

A氏が実際にこのような言動をしていたかは真偽不明だが、後に画像付きで全世界に暴露したり自殺を示唆したりするという極端な行動に出ていることからすると、交際中にもこういう言動があったとして不思議はない。だから、「A氏の言動による恐怖から関係を断ち切れなかった」という伊藤氏の主張も一面では真実かもしれない。

しかし、不貞関係の事件で、「女性から脅されるなどして渋々関係を継続した」と主張する男性のメールなどを見ると、男性もそれなりに積極的に不貞関係を維持しようとしており、かつ不貞関係を楽しんでいたようにしか見えないケースがほとんどだ。

伊藤氏のケースがそのようなケースなのか断定はできないが、一般的には、「相手女性をなだめるためにしょっちゅう会って無避妊でセックスしていました」というのは信用されにくい主張であろう。

6. 不貞男性は指輪などを贈りがち

2016年の年末には、A さんから指輪を買ってほしいとせがまれました。それまで A さんには、生活費と称してほぼ毎月、いくばくかのお金を渡していました。12月はそのお金はいらないから、それを指輪に回してほしいとお願いされました。このとき買った指輪を、A さんは婚約指輪だと認識したようでした。これは最近、初めて知ったことでした。

 不貞カップル間で指輪購入などの象徴的行為が行われているケースにもしばしば接する。

伊藤氏は、A氏からせがまれて自ら贈った指輪がA氏に婚約指輪と認識されたことを「最近初めて知った」と主張している。明示的に婚約指輪と言って贈ったものでないのは真実としても、恋人間の指輪贈与の持つ象徴的な意味について、いい大人が全く意識していなかったというのはどうだろうか。月々もらっているお金を辞退してまで指輪にこだわる相手女性の心理に、全く気づかないまま指輪を贈るということがあるだろうか。

ところで、伊藤氏が贈ったのはどちらの手の第何指に着ける指輪だったかについて、伊藤氏ブログには記述がないようである。

7. 不貞男性は手の平を返しがち

いま思えば、私のやり方は非常に良くなかったと思っています。後に A さんも、もっとちゃんと話し合いたかった、突然警察に連れて行かれて何が何だかわからなかったと言っていました。私は、自分は脅迫されているという恐怖心と被害者意識が非常に強くなっていたため、A さんとじっくり話すということよりも、関係を解消するということに焦ったんだと思います。そして、私はそもそも既婚者であったり、A さんの申し出に曖昧な返事しかしてこず状況を悪化させたり、妊娠と中絶の件であったり、そして妻を深く傷つけていることなど自分にたくさん取り返しのつかない非があることも内心わかっていました。しかし、自分は脅迫されていた、こうするしか方法がなかったという被害者意識に逃げ込み、それら自分の非を認めることができていませんでした。

この引用部分の直前に、別れ話が出て以降の伊藤氏とA氏の間の一連のいざこざが記述されている。このように、妻にバレるなどして不貞が発覚した後の男性が、相手女性をストーカー扱いする等して、不貞関係を続けた責任を相手女性に転嫁するというパターンも非常に多い。

もっとも、伊藤氏とA氏のケースにおいては、最終的にA氏がとった暴露という行動と合わせ考えても、本当にA氏の言動に脅迫的、ストーカー的要素があった可能性は否定できない。

しかし、伊藤氏のケースはともかく一般的には、実際にはストーカーでもなんでもない相手女性をストーカーということにして、自ら積極的に不貞行為を続けていた側面をなかったことにし、相手女性を悪者にして妻の許しを乞おうとする男性が驚くほど多い。

このような手の平返しの責任転嫁は卑怯な行動ではあるが、どちらにもいい顔をすることがいよいよできなくなったとき、優先順位は妻の方が高いということを考えれば、本人にとっては合理的な面もあるだろう。既婚者と知って恋愛関係に入る以上は、このように手の平を返されて恋人の醜い面を見せられる結末になる可能性があることも、覚悟しておく必要があるかもしれない。

この点、伊藤氏ブログの記述によると、同氏は今は被害者的態度にとどまることなく、「被害者意識を盾に、自分の間違いを認めることから逃げてしまった」と述べているので、比較的誠実な部類のように思う。

8. まとめ

このように、弁護士の私が伊藤氏のブログを読むと、その内容は既視感のあるものばかりだった。

不倫に限らず恋愛の渦中にある人は我を失いがちなものだから、自分が悲劇の主人公であるような気持ちになって、自分の置かれた状況を特別なものと思い込みやすいかもしれない。

しかし、個々の当事者にとっては特別な恋愛であっても、他人の男女関係に首を突っ込む稼業の者から見ると、「ああ、またこの種の案件か」と苦笑いするような、教科書どおりのパターンを辿っている話でしかないことが多い。 

不貞の恋愛関係にはまり込んで抜け出せず苦しんでいる人がいたら、一度冷静になって、「私の恋愛や恋人は特別なものでもなんでもなく、よくある不倫話とかよくいる不倫男にすぎないのではないか」と客観的視点を持つよう努めてみるのも有益かもしれない。

 

京葉弁護士法人(おおたかの森法律事務所・佐倉志津法律事務所) 代表

弁護士 三浦 義隆

https://otakalaw.com/

 

 

*1:なお、「避妊しない」の意味も多義的だが、「コンドームを装着せず膣外射精をしていた」というレベルかと思いきや、それどころではなく、「日も選ばずに膣内射精をしていた」という話である場合が多い。膣外射精でも妊娠リスクがあることは誰でも知っていると思うが、何もしないよりは遥かにマシであり、ある程度は防げる。それすらしないというのは、単に避妊を怠ったというより、むしろ積極的に妊娠しよう・させようとしているカップルの行動としか思えない。しかし、このように積極的に妊娠に突き進む不貞カップルは実際多い。