弁護士三浦義隆のブログ

流山おおたかの森に事務所を構える弁護士三浦義隆のブログ。

プロフィール

【氏名】 三浦 義隆(千葉県弁護士会所属) 【事務所名】 京葉弁護士法人(流山おおたかの森・佐倉志津に2拠点) https://otakalaw.com/ おおたかの森法律事務所 【所在】 千葉県流山市東初石6-185-1(新D102街区1) グランデアストーレ102 つくばエクスプレス・東…

中田翔の出場停止解除は脱法的行為

1. 中田翔のトレードと出場停止解除の経緯 長く日本ハムファイターズの主力を務めてきた中田翔選手が、チームメイトへの暴行によって出場停止中だった2021年8月20日、電撃的に読売巨人軍に無償トレードされた。 チームメイトへの暴力という重大な不祥事があ…

慶大生6人不起訴事件と日馬富士事件に通底する問題

久しぶりの更新。 1. 慶大生6人事件にみる公益と私益の相克 1-1. 不起訴の背景には示談成立→告訴等の取り下げがある可能性が高い 1-2. 集団準強姦罪は親告罪ではないこと等 1-3. 公益を重視すれば起訴、私益を重視すれば不起訴に傾く 2. 日馬富士暴行事件に…

不倫カップルにありがちなこと

8月は異様に忙しく、ブログの更新を怠っていた。月も変わったことだし、ここからまた更新ペースを上げていこうと思う。 更新しないでいる間にやや古い話題となってしまったが、はてな元CTOである伊藤直也氏の不倫騒動というのがあった。 不貞相手の女性であ…

エマ・ワトソン演説と「弱者男性」問題について

1. エマ・ワトソン論争の概観 2. エマ・ワトソンの主張は矛盾はしていないが救済にはなりにくい 3. 「弱者男性」「キモくて金のないおっさん」問題に解決策はあるか 1. エマ・ワトソン論争の概観 3年前に女優のエマ・ワトソン氏が国連でしたフェミニズムに関…

高須院長の訴訟を題材に民事訴訟手続の流れを解説しよう

1. 高須院長は蓮舫氏と大西氏の欠席にご不満の様子 2. 民事訴訟に当事者が欠席するのはむしろ通常の事態 2-1. 代理人が出廷すれば本人の出廷は必要ない 2-1-1. 法律上、代理人に加えて本人が出頭する義務はない 2-1-2. 民事訴訟は書面中心のターン制なので、…

強制わいせつ罪の主観的要件についての一般向け解説

1. 性的意図必要説に立つ判例は変更される可能性が高い 2. 従来の判例の立場は性的意図必要説 3. 従来の判例に対する批判など 1. 性的意図必要説に立つ判例は変更される可能性が高い 強制わいせつ罪の成立に、「性欲を満たす意図」が必要かどうか争われた刑…

戸籍を公開する蓮舫氏に期待したいこと

蓮舫氏が戸籍を公開することにしたようだ。 www.news24.jp 私は、蓮舫氏であれ誰であれ、手続の失念などにより二重国籍状態のまま国会議員になった人がいたとしても、騒ぐような問題ではないという考えだ。 もちろん国籍法14条違反の問題はあるから、二重国…

ワタミの求人広告を検証してみたが、やっぱりワタミはダメなのでは

ワタミの求人広告が話題を呼んでいるようだ。 headlines.yahoo.co.jp 月給20万2100円の中に、127時間分の「深夜みなし手当」3万円と、「営業手当」1万円を含むという内容。 これが「127時間も時間外労働させるつもりか」と受け取られて炎上したようだ。 この…

「ラッキースケベ」はセクハラ描写といえるか

週刊少年ジャンプに連載中の「ゆらぎ荘の幽奈さん」という漫画の扉絵が話題になっているようだ。 ジャンプ開いたらいきなりこれだった。成人コミックかと思うよ…。公式の人気投票でキャラをここまで無意味に裸に剥いて、記号のように全員に恥ずかしがる表情…

山折りと谷折りが理解できなかった話

今回は法律とは関係のない話。 今朝、小学1年生の娘が本の付録の紙の工作を持ってきて、「パパ、やまおりってどっちに折るの?」と聞いてきた。 目の前で折ってみせ、 「こう折るんだよ。やまおりって書いてある線があるでしょう。これが山のてっぺんになるよ…

学部生よりも憲法が苦手な竹田恒泰氏

面白いツイートを見つけてしまった。 民進党は臨時国会の召集を「要求」するらしい。形式的とはいえ、国会を召集するのは天皇陛下なのであるから(憲法第7条)、陛下に「要求」とは、言葉が過ぎる。加計 民進が臨時国会要求へ - Y!ニュース #Yahooニュースア…

事務所駐車場に無断駐車されたので賠償請求してみた

1. 度重なる無断駐車被害 2. 弁護士会照会による車両所有者の特定 3. 損害賠償請求 4. 解決 5. 無断駐車対策はなかなか難しい ① 弁護士に依頼するのはコストに見合わない場合が多い ②予め定めた「罰金」を取ることはできない ③ 自動車を足止めするなどの実力…

「任意同行」と欺いて署に連行し逮捕した事案の考察

また警察絡みで「これはひどい」という情報に接した。 毎日放送という関西のテレビ局が、昨日放送したニュース番組だ。 リンク先の動画を要約しておく。 伊豆丸精二という人が電車内で痴漢の疑いをかけられて被害女性から腕をつかまれ、駅事務室に行ったとこ…

弁護士にとって「相手方が弁護士をつけない」というのはどういうことか

日本の法律は、民事については弁護士を強制する制度をとっていない。だから交渉であれ裁判であれ、弁護士をつけずに自分でやることは自由だ。 紛争当事者の一方が弁護士を依頼すると、もう一方も不利になりたくないから弁護士をつけることが比較的多い。 し…

「国選弁護人は手抜きをする」は本当か

刑事事件について、「国選弁護人は手抜きをする」との風評が一部にある。 結論からいうと、この風評は誤っている部分が大きいが、全面的に誤りともいえない。 そこで簡単に解説しておきたい。 1.多くの弁護士は私選でも国選でも真面目にやる 1-1.国選でも…

叱責はどこからパワハラになるか

国会議員が秘書に対し、殴ったり暴言を吐くなどのパワハラをした件が話題になっている。 私もネット上に公開されていた録音を聴いたが、あまりのひどさに驚いた。文句なしに不法行為であろう。 行為そのものは非難に値するが、加害者も精神的にケアが必要な…

警察官が犯罪をでっち上げて被疑者を逮捕した上、友人を目撃者に仕立てて偽証をさせた事例

道交法違反関係の裁判例を検索していたら、「これはひどい」という裁判例にヒットした。面白いので紹介しておく。 事件そのものは昭和50年。裁判は刑事が昭和51~52年、民事が昭和58~61年と、かなり古い話ではある。 以下に流れをまとめてみた。 昭和50年5…

性犯罪規定改正の要点 ~ 非親告罪化は被害者を救うか

今国会では重要な刑法改正案が成立した。*1 この改正は、性犯罪に関する複数の規定を大幅に改めるものだ。6月23日に公布され、7月13日に施行される予定。 共謀罪の影に隠れて、一般の方にはあまり注目されていないようだから、簡単に解説しておきたい。 今回…

「ソシャゲ破産は免責されない」は誤り

1. 「ソシャゲ破産は免責されない」との誤情報は人を殺す 2. 浪費や射幸行為は免責不許可事由だが裁量免責は可能 2-1. 浪費や射幸行為は免責不許可事由 2-2. 免責不許可事由があっても多くの事例では裁量免責される 3. とはいえ過度の浪費は禁物 1. 「ソシャ…

やりたくない事件にだけ「抑制的」な警察を動かす方法

1. やりたくない事件には「抑制的」な警察 2. 警察を動かしたいときどうするか 2-1.告訴と被害届 2-2. 告訴を受理すると捜査をする義務が生じる 2-3. 警察は告訴状の受理を嫌う 2-4. 弁護士が警察に捜査を求める場合どうするか 1. やりたくない事件には「抑…

表現の自由の主戦場は昔も今もエロだ

1. クジラックス氏が警察から自宅訪問を受けた件 2. 表現の自由の主戦場は昔も今もエロ 1. クジラックス氏が警察から自宅訪問を受けた件 漫画作品に描かれた強姦の手口を模倣した強制わいせつ犯が発生したとのことで、埼玉県警が、作者のクジラックス氏の自…

スマホを「注視」しなくても切符を切ろうとする警察官に注意

目次 1. 違反をしていないのに切符を切られそうになった件 2. 道交法の携帯電話などの規制の解説 2-1. 道交法71条5号の5 2-2. 「注視」とはどのような行為か 3.追記 1. 違反をしていないのに切符を切られそうになった件 2週間ほど前のこと。私は仕事の移動の…

橋下氏の父が暴力団員であったことを書いても賠償義務なしとされた裁判の解説

www.sankei.com 橋下徹氏の実父と叔父が暴力団組員だった等と報じた月刊誌「新潮45」の記事が名誉毀損及びプライバシー侵害にあたるとして橋下氏が新潮社らを訴えていた件で、最高裁が上告不受理を決定したようだ。 民事訴訟法上の権利として上告できる「上…

「有罪率99%以上」の背景

日本の刑事裁判を語るとき、必ずといっていいほど持ち出されるのが「有罪率99.9%」とか「有罪率99%以上」というフレーズだ。 「有罪率99.9%」については、匿名弁護士の刑裁サイ太氏が以前ブログで検証していた。*1 keisaisaita.hatenablog.jp この記事による…

保釈制度を基礎の基礎から解説しよう

「保釈」という言葉はマスコミ報道などでもよく目にするが、意外と誤解の多い制度だ。 典型的な誤解としては、「悪いことをしたのに金を積めば出られるのはおかしい」といった意見が散見される。 保釈制度を理解するためには、前提となっている大原則から理…

無期懲役刑は終身刑だ

一審で無期懲役の有罪判決を受けた殺人事件の被告人が控訴したというニュースが話題になっている。 なんでも、被告人は一審の公判において「無期懲役は実質的な終身刑。私は唯一、それだけはいやです」と述べたらしい。 それはいやだろうとは思う。高裁の結…

業務上のミスで生じた損害を給与から天引きするのは違法

労働者が仕事上のミスによって使用者に損害を与えた場合に、損害額を労働者の給料から差し引いて支給するケースがときどき見られる。 このような天引きは、業務上の事故がつきものの運送業などでは、ある程度広く行われているようだ。 この問題は2つの層に分…

5月のブログ運営を振り返ってみる(PV100万超、ブクマ増加数1位など)

1.月間PV100万超 2017年4月に開設した本ブログ、2か月目の5月はちょっと頑張って26回も更新した。 その結果、PVは100万を超えた。はてなブログ本体と、同じ内容が転載されているBLOGOSを合わせての数字だが。 本体のPVが85万強。BLOGOSが19万強。 2.はてな…

「管理職だから残業代は出ない」は誤り

1. 労基法上の「管理監督者」には残業代を払わなくてよい 企業の実務上、一定以上の職位にある管理職に対して残業代を支給しない、という取扱が広く行われている。 このような取扱がなされるのは、使用者側が、一定以上の職位にある管理職労働者を、労働基準…